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EPSの耐熱性について詳しく教えて?

EPS(発泡ポリスチレン)の耐熱性は、主に材料の化学構造と発泡構造に基づいています。
EPSは優れた断熱性能を持ちますが、耐熱温度には限界があり、高温環境では特性が変化します。
以下に、EPSの耐熱性について詳しく説明します。

 

1. EPSの耐熱温度
一般的な耐熱温度範囲:EPSの使用可能な温度範囲は約 -20°C ~ 60°C とされています。
・短時間での耐熱限界:70°C前後まで耐える場合があります。
・長時間の使用:70~80°Cを超えると変形や性能劣化が起こる可能性があります。

 

2. 高温での挙動
1)軟化温度(ガラス転移温度)
 ポリスチレンのガラス転移温度は 100°C前後 ですが、発泡構造によりEPSの実用温度はこれより低くなります。
 80°Cを超えると内部の発泡ガスが膨張し、収縮や変形が発生します。
2)熱による収縮
 80°C以上になると発泡体の細胞構造が壊れ、体積が縮小します。
 温度変化が急激である場合、ひび割れや断裂が起きることがあります。
3)酸化
 高温環境で酸素にさらされると、ポリスチレン分子が酸化して物性が劣化します。

 

3. 耐熱性を高める方法
EPS単体の耐熱性は限られていますが、以下の方法で改善が可能です:
1)高耐熱ポリスチレンの使用
 EPSのベースとなるポリスチレンに耐熱改質剤を添加すると、耐熱温度が向上します。
2)コーティング処理
 EPS表面に耐熱性の高い塗料やフィルムをコーティングすることで、耐熱性を向上させることができます。
3)複合材料化
 他の耐熱性素材と組み合わせて使用することで、耐熱性が求められる用途にも対応可能。
4)密度の調整
 高密度EPSは低密度EPSよりも高温に対する耐性が高い。

 

4. EPSの耐熱性が問題になる用途
耐熱性が重要な用途や条件では、EPSの特性を考慮する必要があります。
1)断熱材としての使用
 EPSは優れた断熱材ですが、高温の設備や機器に直接接触する場所には適していません。
 温度が高い場合、耐熱性の高い断熱材(例:XPSやウレタンフォーム)を選ぶべきです。
2)食品容器
 EPS製の食品容器は、通常60°C以下の温度で使用されます。熱い液体や油が長時間触れる場合は、

 変形のリスクがあります。
3)建築用途
 屋根下断熱材や外断熱工法での使用時、高温にさらされる箇所では耐熱性を確認する必要があります。

 

5. EPSの耐熱性の限界を超えた場合の影響
・形状変化
 発泡構造が崩壊し、形状が縮む。
・断熱性能の低下
 内部の発泡ガスが放出され、断熱性能が劣化。
・力学特性の劣化
 圧縮強度や引張強度が低下。
・安全性
 通常の使用環境(~80℃)では有毒ガスの発生リスクはほぼゼロ。 
 250℃以上の高温で分解が進むと、有毒ガス(スチレンモノマーなど)が発生する場合があります。

 

6. 高温環境での代替材料
EPSが使用できない高温環境では、以下の材料がよく使われます:
・XPS(押出発泡ポリスチレン):EPSに比べて若干高い耐熱性を持つ。
・ポリウレタンフォーム:耐熱性と断熱性能が高い。
・フェノールフォーム:高温耐性が求められる断熱用途で使用。

 

7. EPSの耐熱性を考慮した実用例
1)断熱ボックス
 保冷用途では優れていますが、高温用途(熱湯やオーブン対応)には適していません。
2)土木用軽量盛土材
 地中で使用する場合は高温にさらされるリスクが低く、EPSの耐熱性が問題にならない。
3)製品梱包材
 電子機器の輸送時など、高温環境での保管に注意が必要です。

 

EPSは軽量で断熱性に優れる反面、耐熱性には限界があります。
高温環境や特定の使用条件がある場合には、適切な代替材料や設計変更が必要です。